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現場起点の採用活動を実現。日経電子版の内製化を支えたデジタル人材採用の変遷に迫る

株式会社日本経済新聞社 デジタル編成ユニット API Product Manager 髙安 伯武
DX推進室次長 兼 デジタル編成ユニット 服部 三千子

――お二方のお役回りについて教えてください。

髙安さん:日経電子版の主に関わるデジタル編成ユニットという部署でバックエンドエンジニア兼エンジニアの採用担当をしています。日経には2015年に入社し、日経電子版のバックエンドの開発に携わってきました。最近はエンジニアの組織課題に取り組むことも多く、その一環でエンジニア採用にも関わっています。

服部さん:当社には1992年に入社、日経テレコン、NEEDSといったBtoBサービスやNIKKEI NETなどのサービス部門から管理部門まで経験してきました。電子版創刊によりデジタル人材のキャリア採用が活発化した頃から、デジタル事業部門全体のキャリア採用に携わっています。

有料会員76万人の日経電子版。開発の内製化のきっかけは現場メンバーから

――日経電子版は、大手企業のデジタル事業の中でも特に先進的でユーザー数も多い印象ですが、事業の変遷について教えてください。

服部さん:電子版が始まったのは2010年3月。日経電子版に関わる部署であるデジタル編成ユニットは2009年の4月に新設されました(注:当時の名称は、デジタル編成局。以下、デジタル編成ユニットに統一して表記)。新聞の紙事業だけでは先がないという議論があり、当時日経電子版の前身として無料で提供していた「NIKKEI NET」をサブスクリプション化して事業の柱に加えていこうという流れになりました。

爆発的な伸びに繋がったのは、iPadに対応した紙面ビューアーを用意したことでした。日経電子版は当初はパソコンのみに対応していましたが、2010年に初代モデルの iPad が登場し日本でも普及が拡大していたことから、急遽iPad用のビューアーを作成しました。iPadのCMにも登場させてもらっています。

服部さん:利用者数が10万人を超えたあたりから伸びが大きくなり、さらに世の中のスマートフォンの普及に伴い、電子版のユーザーは増え続け、日経電子版ユーザーは現在76万人になります。

髙安さん:2017年には、Google I/O(Googleが年次で開催している技術セッション)に取り上げられてもいますね。

――日経電子版は内製化にもかなり取り組まれていると伺いました。どのようにして内製化を果たしてきたのでしょうか。

髙安さん:弊社の内製化の文化は、実は日経電子版の前身の NIKKEI NET 時代からすでに始まっていました。根底にある、主体的にサービスを改善していくという価値観はこの頃から受け継がれているように思います。

日経電子版の創刊当時は、大手SIerへの請負開発にしていました。しかし、やりたいことがたくさんあっても、開発が請負であれば、契約の都合でちょっとした改善にも時間とお金がかかってしまいます。そのことに課題感を持ったメンバーが、複数の有志のメンバーを巻き込んで一部の機能の開発を自分たちで始めたことで、内製化へと舵を切っていくことになります。

内製化初期にはさまざまな案がボツになるなどの紆余曲折がありましたが、2013年には内製開発したスマホブラウザ版を公開でき、この頃からさらに内製化の機運が高まっていきました。その後、よりユーザーに近い部分で高い品質と変更頻度が求められるスマホアプリやフロントエンドなどから順に内製化を推進していきました。

デジタル人材の採用活動の第一歩は、新たな採用ルートの開拓(2013-2015年)

――内製化に伴い、サービスを開発するエンジニアなどデジタル人材の採用をされていると伺っていますが、どんな風に採用活動を開始されたのですか?

服部さん:デジタル編成ユニットを新設後、組織づくりがある程度できてきた2013年頃から、内製化したシステムを開発できるエンジニア・デザイナーなどのデジタル人材の採用を開始しました。

採用を開始した時に一番の課題となったのが、会社に「キャリア採用を定着させること」でした。それまでの当社の採用は、新卒で採用して長期的に雇用する形式が主流で、キャリア採用自体ほとんど行ってきませんでした。さらに、キャリア採用も基本的に採用するポジションは記者中心でしたので、記者以外の採用経験が殆ど無いうえに、エンジニアとなると未知の職種すぎてわからない、という状況でした。

こうした事情もあり、より柔軟に良い方を採用するべく、デジタル編成ユニットでは人事部門の協力を得たうえで、エージェントを利用するなどの採用活動を開始しました。

ターニングポイントは、現場メンバー起点のリファラル採用。採用に関心のあるメンバー中心にエンジニア採用が加速(2016-2017年)

――人事部門の協力を得ていったのですね。その後部署別の採用活動はどう進展していったのでしょうか。

髙安さん:新卒で入った優秀な社員を起点に、2016年は「リファラル採用が活性化した」年になりました。この時に入社してくれた社員が非常に優秀で、内製化の推進力にもなりつつ、友人に積極的に紹介してくれたことで、リファラル採用が盛り上がりました。紹介があった際は、今で言うカジュアル面談に相当するものを頻度高く実施していました。

服部さん:また当時、開発内製化を推進したメンバーが、採用活動にも非常に積極的で社外の方をリファラル採用で引き入れたり、採用手法をこれまで活用していなかったエンジニア専門の求人媒体でのスカウトを開始したりするなど、自発的な活動として行なってくれていました。彼は slackを導入するなど社内のDX推進も積極的に進め、デジタル事業内に常に良い風を吹き込んでくれていました。

技術課題を用いた面接で高い見極め精度を実現(2018-2019年)

――選考フローに関連して、貴社ではスキルジャッジのために技術面接を導入もされていますよね。大企業で技術面接をする事例はまだまだ少ないように思いますが、貴社ではどのように浸透されたのですか?

服部さん:よりスキル面で部署に合う人を採用できるように開始しました。それまでの選考フローにスキル面のジャッジを現場で行うよう、選考ステップを加えた形になります。

人事部門とは、これまでメディアに関わったことのない方をどういった点で見極めて採用するかなどの基準についても都度話し合いました。エンジニアという職種について理解を深めてもらうよう説明を行ったり、ラフな雰囲気の方が選考にきても驚かないように伝えておいたりと、人事部門と現場の我々との不整合が起きないようにすり合わせを行なっていきました。

高安さん:技術力は面接だけでは推し量りきれないもので、実際に課題を解いたりコーディングしたりしないと分からない部分があります。技術面接の際に、まずは基本的な技術力があるかどうか、既存メンバーの平均以上かは見ています。また、日経電子版の開発において、コードだけ書いていればいいというケースは少ないので「技術を使って事業を伸ばす」「課題を解決する」という経験があるか、自分の担当範囲外にどれだけ興味を持ってカバー範囲を広げているかという点も見ています。

技術面接を取り入れることで、選考において見極めの精度がかなり向上しました。
技術面接を体系化することで、異なるポジションで選考を進めていても統一的に技術力を測りやすくなったり、他ポジションを含む過去の候補者と比較しやすくなり判断基準が安定したりしたと思います。

また、現場メンバーにもこの選考に参加してもらっていることで、候補者の方が実際に働くイメージを具体化しやすく、日経へのモチベーションを高めていただく良い機会になっています。実際に、面接で会ったメンバーと一緒に働きたいとおっしゃっていただき、入社された方もいます。

どういう方が入社するのかを現場メンバーが把握できているので、入社前からお願いしたいタスクの準備などオンボーディングをしやすくなった面もありますね。

ユニット全体が一丸となって採用活動を行う体制へ(2019年)

――意欲的なメンバーが主体となって採用を推進されていたのですね。今では現場の各チームが主体となって採用活動を行なっていると伺っていますが、個→チームでの採用体制に至るまでには何があったのでしょうか。

服部さん:日経電子版がこれまでの成長線上にない高い目標を掲げたことで、目標管理の手法としてOKRを導入しました。一部のメンバーだけが採用活動に参画するのではなく、チームやユニット主体での取り組みが必要になると考えたことから、採用も Key result の一つとして採用決定人数を目標にしました。

さらに、採用活動を推進していく役割としてが採用チームリーダーを設け、計画的に採用活動を行える体制に変わっていきました。

これまでは採用について部署内に共有する文化はあまり無かったのですが、OKRを振り返るなかで採用についても触れる機会が多くなり、皆の採用への意識が上がっていきました。ここから採用活動は一部の有識者だけではなく、チーム全員で動く時代へと向かっていくことになります。

※OKRとは
OKRとは目標の設定・管理方法のひとつで、Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称です。

職種別リーダーによる自律的な採用活動が行われる現在(2019-2020年)

服部さん:OKRに採用を組み込んだことで採用活動のスピードが加速し、年間10名の採用に成功しました。しかし、採用リーダーに負荷が集中し、業務が属人化しがちだったことから、現場の社員に直接採用活動に携わってもらう必要があると考えました。

そこで、現在は採用リーダーの他に職種別リーダーを抜擢し、カジュアル面談や求人媒体でのスカウトなどを行ってもらっています。

髙安さん:私ももともと職種別リーダーとして採用活動に参画していました。今年からは採用チームリーダーも兼務して、採用に関わる比重をあげています。

採用したい職種について詳しいメンバーがスカウトを行うことで、良い方と接触ができるようになりましたし、面談の質も向上したと感じます。その結果、特に採用優先度の高い職種については、今年に入ってからカジュアル面談実施が4倍弱にペースアップしています。

服部さん:OKR導入や職種別リーダーのアサインで、部署のメンバーひとりひとりの採用への意識が高まっていますね。実際、採用に力を入れているチームにはちゃんといい人の採用が決まっていることもあり、触発されて自分たちのチームもより採用に積極参加しようという流れが生まれています。

HERPを活用することで採用もDX。チーム起点の採用活動がよりスムーズに(2020年3月-)

――HERPがご支援させていただくようになった2020年にはどのような課題感があったのですか?

髙安さん:採用チームリーダーの負荷は依然として高く、採用活動のリソースをどうカバーするかというのが大きな課題になりました。活動に携わる人員を多くは確保できない中、逆に採用は強化していく方針だったため、ベストプラクティスを知る外部パートナーの協力を受けることを検討しました。

その中で、HERP社はエンジニアの採用知見を有しながら、弊社のような現場主導の採用活動を支える採用管理システムを提供されているとのことで、自社の課題解決につながるのではないかときいう期待があり依頼しました。

服部さん:コンサル支援によりノウハウが提供されたり人材要件を見直したりしたことに加えて、採用管理プラットフォームの「HERP Hire」を導入したことで採用のDXも進みました。以前のスプレッドシートでの管理で起きていたエントリーの登録業務・ステータス変更忘れ、シートの編集履歴を参照しながらの高度なデータ分析…という煩雑な運用から脱却できたことは、業務効率化の観点で一番大きかったと思います。特に候補者との連絡スピードが上がり、基本1営業日以内にご連絡できていることは、候補者体験の向上に寄与していると思います。

髙安さん:HERP導入後は、媒体に応募があれば自動で応募情報が一元管理され、元は散らばっていたファイルデータも辿りやすくなりました。進捗は全てHERPに記入し、slackに通知されるので、職種別リーダーとのコミュニケーションがスムーズになり、候補者に関する情報を集めやすくなりましたね。それによって見極め精度が上がったと感じます。採用に積極的に取り組む文化に非常にマッチしていると感じます。

HERPさんにサポートしてもらうことにより、採用活動がまるで高速道路に乗ったようにスピードアップしましたね。(了)

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