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ユーザベースが明かす、新メンバーの活躍を支えるオンボーディングプロセス

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新入社員の早期活躍・定着を目的として、オンボーディングに力を入れたいと考えている企業は多いはず。しかし、限られたリソースの中でしっかりと整備されたオンボーディングプログラムを設計し、運用するのはなかなか難しいものです。

そこで今回は、HERPとピープルマネジメントツールWistantの共催で、ウェビナー「ユーザベースが明かす、新メンバーの活躍を支えるオンボーディングプロセス」を開催。

経済情報プラットフォームの『SPEEDA』や国内最大規模のソーシャル経済メディア『NewsPicks』などを提供するユーザベースで、カルチャー担当の執行役員を務める村樫さんにお越しいただき、ユーザベースが実践するオンボーディングプログラムを解説いただきました。

レポートではユーザベースが提供しているオンボーディングプログラムの詳細やその背景、設計時のポイントを詳しく紹介しています。

  1. ユーザベースのオンボーディングの位置づけとゴール
  2. オンボーディングの運用体制
  3. 実際のオンボーディングプログラム
  4. 村樫さんに聞くオンボーディング設計のポイント

ゲスト
村樫 祐美氏/株式会社ユーザベース/グループ執行役員 カルチャー担当
東京外国語大学を卒業後、メーカー系商社に入社し経理財務に従事。2011年8月にユーザベースに入社。SPEEDA、NewsPicksにて複数のポジションで経験を積んだ後、2015年にCulture teamを立ち上げ、国内外の全社の採用の責任を担い採用や面接フローの仕組みを構築。2018年10月から産休・育休を取得し2020年4月に社内新規事業プログラム「think beyond」の事務局長として復帰。2022年1月より現職。

モデレーター
株式会社フルート 代表取締役 菊池 裕太(以下:菊池)
株式会社HERP レベニューマネージャー 冨田 真吾(以下:冨田)

ユーザベースのオンボーディングの位置づけとゴール

冨田:今回は経済情報プラットフォームの『SPEEDA』や、国内最大規模のソーシャル経済メディア『NewsPicks』などを手掛けるユーザベースで、カルチャーチームのリーダーを務める村樫さんにお越しいただきました。

村樫さんにはユーザベースが新メンバーの活躍を支えるためにどのようなオンボーディングプログラムを実施しているのか、設計面や思想の部分からお話いただきたいと思っています。

では早速ですが、まずはユーザベースで実施しているオンボーディングの位置づけやゴール設定に関して伺えますか?

村樫:弊社のオンボーディングは、新入社員それぞれが、しっかりと各々がやりたい・実現したいと思っている「Will」に近付いていただくために、また、最大限のパフォーマンスを早期に発揮して活躍していただくためにということをゴールに置いて設計しています。

その上でオンボーディング期間を9カ月と定め、最初の3カ月間でインプット系のオンボーディングプログラムを提供しています。

なぜ「9カ月」かというと、弊社では評価期間やOKRを3カ月毎に区切っているので、そのサイクルに合わせるというのが一つ。それから、入社半年以内でパフォーマンスを出すことを求めるのはややハードルが高いという感覚があり、9カ月を基準としています。

冨田:「最大限のパフォーマンスを早期に発揮して活躍してもらう」とありましたが、具体的には9カ月の間でどのような状態になればオンボーディングが成功したと言えるのでしょうか。

村樫:弊社ではオファーの段階でその方のポジションに求める行動や成果を細かく定義しているので、基本的にはそれが達成できているかどうかが基準になりますね。

冨田:オファー時の期待やジョブディスクリプションの定義にマッチしているかどうかを見ているわけですね。オンボーディング期間の9カ月が終了した際に、期待に至らなかった場合は?

村樫:その際は期待値を調整し直して、その方の能力に見合ったポジションでご活躍いただくことになるイメージですね。ただ、大多数の方はしっかりと早期に力を発揮されていると思います。

オンボーディングの運用体制

冨田:次に、オンボーディングの運用体制についてご説明いただけますか。

村樫:前提からお伝えすると、ユーザベースはカンパニー制を敷いていて、グループで9つの事業を行っています。その中で、私が所属するカルチャーチームでは、全社横断のオンボーディングプログラムを設計し、実行しています。

弊社では正社員、契約社員の方は毎月1日と16日、業務委託、アルバイト、インターンなどの方は毎週月曜日を入社日として設定しているので、そのたびにオンボーディングをスタートしています。

加えて、それぞれのカンパニーで独自のカルチャーや事業理解、組織体制がありますから、必要に応じて各カンパニーのHRやイネーブルメントチームが、基本のオンボーディングプログラムとは別でオンボーディングを行っているケースもありますね。

冨田:なるほど。本日はカルチャーチームの取り組みを中心に伺えればと思っているのですが、チームのミッションやメンバー構成はどのようなものなのでしょうか。

村樫:カルチャーチームのミッションは比較的幅広く、主に組織開発や人材開発の領域ではあるのですが、オンボーディングの他にカルチャー醸成のためのコミュニケーション設計、経営会議の設計やオペレーションといったところも含まれます。メンバーは私を含めて7人ですね。

また、カルチャーチームとは別に「Waku Workチーム」といういわゆる総務チームが存在していて、オンボーディングプログラムはWaku Workチームと協力して実施しています。

Waku Workチームは新入社員のウェルカム感の醸成をミッションにしていて、主に入社1日目のリアルでのオンボーディング体験の提供などを行っています。

Waku Workチームも含めると、1度のオンボーディングに関わるメンバーは大体8人くらいになりますね。

実際のオンボーディングプログラム

冨田:では、実際のオンボーディングプログラムの内容や進め方について伺えますか。

村樫:冒頭でお伝えした通り、ユーザベースではオンボーディング期間を9カ月設けていますが、研修などのインプットを行うオンボーディングプログラム自体は3カ月で終えるように設計しています。

このオンボーディングプログラムでは、カルチャーの理解を促すもの、コミュニケーションを活性化させるもの、コンプライアンスに関するもの、そして事業理解を促すものの4種類を実施しています。

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村樫:研修のボリュームに関しては、入社初日は1日かけて入社オリエンテーションを実施していて、入社1カ月程は毎週1~2時間ほど、2カ月目になると月に3時間弱、3カ月目には2時間程度となっています。

入社オリエンテーションではPCのセットアップやオフィス見学、新入社員の歓迎ランチなどを行っていますね。同じ日に労務研修や情報セキュリティ研修を受けていただいています。

初日以降の内容については、「オンボーディング研修一覧」を参考にしていただければと思います。

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冨田:オンボーディング研修一覧を見たところ、カルチャー関連の内容についてはこだわりを感じつつも、比較的オーソドックスな印象を受けました。また、事業理解やコンプライアンスに関する部分もイメージが付きやすい部分だと感じます。

一方でコミュニケーションの項目については独自の取り組みも多い印象です。一つずつ、どういった内容なのか伺えますか?

村樫:上から順にお伝えすると、まず「90 days program研修」に関して。

やはり入社直後は「早く結果を出さなければ」と切羽詰まっている状態の中で、分からないことが出てきたり、「こんなこと聞いていいのだろうか」と思うことがありますよね。

そういったことを同期同士でシェアしてもらうことで心理的安全性を高めるとともに、コミュニケーションを活性化させる目的で行っています。

また、90日間のオンボーディングプログラムを通じて学んだこと、実感したことを振り返ってもらうことで、カルチャー理解を促進する狙いもありますね。

次の「WelP制度(Welcome Partner制度)」は、職種やチームの垣根を越えた交流を促すための取り組みです。

新入社員の配属とは異なる部署に所属するメンバーとバディを組むのですが、バディ役の人は社内の横のつながりを増やすことをミッションに持っているんです。

例えば新入社員が「こういう人と出会いたい」というときに、「この部署のこの人がそうだから、今度3人でランチに行こう」といったように、社内のネットワークを作る支援をしてくれるんですよ。

冨田:なるほど。素敵な取り組みですね。バディ側の方がしっかりワークしているかどうかは、どのように確認しているんですか?

村樫:期間中にバディと何回ランチにいったか、などのアンケートを取って確認しています。ただもちろん、バディの忙しさなどで差が出てきてしまうことは実態としてありますね。

冨田:次の、入社後面談はいかがでしょうか。

村樫:メンバーは入社1カ月~2カ月ほどで担当役員、または同じ事業部の役員と面談するというもので、比較的オーソドックスな内容かと思います。

弊社のタイトルが6以上(管理監督者に相当)で入社される方に関しては、同じ事業部の人ではなく、別の事業部の役員が担当します。プレッシャーや周囲からの期待も大きくなる分、その方が馴染めているかどうかや不安がないかなどは、一歩引いた立場の方がフラットに見れるというのが過去の経験から分かり、こうした体制になりました。

冨田:最後はセルフケア研修ですね。

村樫:セルフケア研修に関してはまさに準備段階で、これから1回目を実施するところなんですよ。

やはり入社直後は日々の仕事に忙殺されてしまいがちですから、自分がメンタル・フィジカル共に健康的にいられているかを振り返るきっかけづくりを研修内で提供したいという思いで始まっています。

内容としては、入社後の3カ月間月に1回ずつ心理テストや疲労度テストなどを受けてもらい、自分がハッピーに働けているか、サステナブルな働き方ができているかどうかをチェックしてもらうというものです。その際にカウンセラーの方が講師となっていただき、どういう時に人はストレスを抱えるのか、どう解消したらいいかなどのインプットももらえます。

村樫さんに聞くオンボーディング設計のポイント

冨田:ここまでのお話は、全社共通の研修内容としてお伝えいただいたと思うのですが、参考までに、事業部独自のオンボーディングではどのようなことを実施しているのかを伺えますか?

村樫:事業部研修はその事業部ごとにさまざまですが、私の所属するカルチャーチームでは、まずは「とにかく焦らずにキャッチアップしよう」という前提を丁寧に伝えることを心掛けていますね。

あとは入社1カ月のタイミングで入社前後のギャップやチームメンバーの他己紹介してもらうなどさまざまなテーマでアウトプットしてもらい、会社や人の理解を促したり。

また、入社3カ月のタイミングでは、「ユーザベースでどうありたいのか」「何を成し遂げたいのか」といった中長期的なキャリアを言語化し、ミッションに置くといったようなことをやっています。

業務に関しては、カルチャーチームの業務内容の性質もあるので、基本的にはOJTで行っていますね。

冨田:ありがとうございます。では最後に、村樫さんの考える「オンボーディング設計のポイント」について伺えますか?

村樫:ユーザベースでは今回ご紹介したようなオンボーディングプログラムを実施していますが、それでもやはり全新入社員が満足するオンボーディングプログラムを提供することは難しいと思うんです。

こちらが良かれと思って沢山情報をお渡ししても「キャッチアップしきれない」という人もいますし、逆に「もっと背景から丁寧に説明してほしい」と感じる人もいるはずです。

ですから、会社の文化を説明したり必要な情報にアクセスできる状態を作ることも当然大切なのですが、それよりも「その人が本当は何に困っているのか」「オンボーディングのときにどんな不安を抱えているのか」といったことを理解して一人一人にしっかり対応することが何よりも大切だと思っているんです。

われわれのような1000人規模の会社と、数10名~数100名のスタートアップとでは、立ち上がりに求められる期間もオンボーディング時に必要な内容も異なると思います。でも、どういった職場であっても共通して必要なのは、「チーム全員で新入社員をフォローする」という意識を持つことです。

「新入社員が心理的安全性を保って働くことができる状態を、全員でつくるのだ」という意思が最も大切なポイントだと思いますね。

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